参加者・保護者の声

出雲高等学校吹奏楽部 アメリカフロリダ研修 

    (2006年3月27日〜2006年4月5日) 

米国研修同行記

保護者 青木典子

 二十数時間におよぶ長旅の終点、オーランド空港で私たちを迎えてくれたのは、燦々と降りそそぐフロリダの太陽と乾いた風、色鮮やかに咲き誇るブーゲンビリアの花と緑のヤシの樹でした。なんだかわくわくする、素敵な予感がしたのを昨日のことのように思い出します。10日間の研修でしたが、振り返ると楽しかったことばかりが浮かんできます。

 思い返せば昨年の9月、ディズニー全米名誉バンドフェスティバルに日本バンドを代表して出雲高校を推薦したいという話を初めて聞きました。驚いたと同時にマーチングバンド部がディズニーランド内で演奏する姿と、それを見守る自分の姿を想像し、これが叶えばこの子達にとって一生の宝になるであろう、なんとか実現させてあげたいと強く思いました。約2ヶ月後、大久保先生、横山先生をはじめ関係各所の皆様方のご尽力により実現に漕ぎ着けた時が本当の始まりだったでしょうか。

 さて、本題です。何はさておき、私にとって最も印象に残っているのはディズニーオナーズのプレミア演奏会です。30数団体の中から栄誉ある6団体に選出され、2000人以上収容できる大ホールのステージ上に現れた彼らは、緊張しつつも晴れやかな笑顔で、演奏することをとても楽しんでいるようでした。曲紹介の後、静まりかえった場内に指揮棒が小さく振られると、フルートから始まって次々と奏でられるオペラ座の怪人を聴きながら、私は感動のあまり体は震え、鳥肌が立ち、溢れ出る涙は止まりませんでした。演奏が終わり、沸き上がる拍手に続き、次々に客席の人が立ち上がり、なおも割れんばかりの拍手の渦。その次に続いたローマの祭りも再びスタンディングオベーション。音楽を通してステージと客席が、日本と米国がひとつになった瞬間でした。魂を呼び覚まされたような感覚と、言い尽くせない充実感、全てをこの眼で見て、聴くことができた幸福感に浸り満ち足りた一時でした。そして「合心響魂」の本当の意味を、私自身が初めて理解できた気がしました。音楽とは心を音で表現するもの、ディズニーオナーズという最高の舞台で引き出された感性が、聴く者の心にそのまま伝わった結果が、この日このときの演奏だったに違いありません。このときの演奏はきっと一生忘れないことでしょう。

 そして、翌日のマジックキングダムでのパレード、さらにその後のリバビュー高校での交流演奏会(リバビューの部員の皆さんと一緒に踊ったどじょう掬いは最高でした!)と回を重ねる度にエンターテイナーとしての感性を磨き、奥深さを増して成長していく姿を見て、音楽を通した国際交流を立派に成し遂げたものと確信しました。

 グリーンバンド・プログラムで訪れたサラソタ市は、まるで真夏を思わせる青い空と白い雲、紺碧の日本海とは異なるエメラルドのような海、砂糖のように白い砂、出雲と対照的な明るく爽やかな町でした。ホームステイは日程の都合で僅か1泊しかできませんでしたが、リバビュー高校の皆さんや家族の方々には温かく迎え入れて頂き感謝しております。さすが同年代、国境や言葉の壁を瞬時に乗り越え、すぐにうち解けて海岸はとても楽しそうな笑い声に溢れていました。アメリカの文化や生活に触れるとともに、リバビュー高校の授業にも参加して、実際に現地の高校生活を体験できたり、交流したりと、とても貴重な体験だったと思います。この日一緒に植えたナラの木がみんなの成長とともに見上げるような大木になりますように。

 全般を通して、どの子供達も全てにおいて日々成長する姿が見受けられました。自分が何をすべきか、自分に何ができるか、一日一善も念頭に置いて行動していたように見えました。毎日の何気ない行動にそれは表れていました。行き帰りの飛行機内では、帰国後の試験に備えて勉学に励み、現地で体調を崩せば、自由時間もパークへ遊びに行くのを止めて休養し、コンディションを整えて本番ではきちんと演奏していました。夜が遅くても朝は自分で起きて準備をし、早い集合時間(サマータイムもあり結構きついものでした)にも遅れず、忘れ物も殆どありませんでした。疲れていても常に先頭に立って荷物の積み下ろしをする子、大きな声で「あとちょっとだから頑張ろう!」と声を掛ける子、仲間を気遣いながらそっと手を差し出す子等々数えればきりがありません。保護者であるはずの私が彼らから教えられ、学んだことも多々ありました。この10日間は、戸惑い、迷い、悩みながらも数え切れないほどの事を学び、自ら解決の糸口を掴み、一回りも二回りも大きくなったと思います。この経験は彼らに生きる力を与え、必ずや今後の人生の糧となることと信じます。大きな成果を礎に、未来に羽ばたいて下さい。素晴らしい演奏を聴かせてくれた79名の吹奏楽部員の皆さん、感動をありがとう!

「スタッフの一員として」身分証明書までいただいたのに、実際はどうしてよいのかわからず、ある時は追っかけもしくはサポーター、ある時は聴衆のひとりとして、あとはただ見守るだけと何のお役にも立てず申し訳ありませんでした。

大久保先生、渡部先生、佐野先生、古川先生、そして横山先生引率お疲れ様でした。無事学校に帰ってくるまで夜も眠れなかったに違いありません。音楽に限らず、全てにおいて先生方の御指導がなければ、これほどの大きな成果を得ることはできなかったと思います。心から感謝申し上げます。

カメラマン小池さんは常に子供達の中心、笑顔の震源地にいらっしゃいました。温かくも鋭い視線の先に子供達はどのように写し出されたのか、早く見たい気持ちに駆られます。

そして熊谷さん、幡井さん、余桝さん、ジェイソンさん、全般にわたってフォローしていただき、ありがとうございました。また重い機材を抱えてビデオ撮影お疲れ様でした。きっと素晴らしいDVDが出来上がったであろうと期待しています。恵美子さんとジュディさんには通訳、楽器の搬送、ホテル内や会場でのマネージメントに加え、子供達の健康管理から食事のことなど事細かく心配りをいただき、不自由なく過ごすことができました。また同じ子をもつ母親として学ぶことが大変多く、お二人に出会えたことは私の研修でもありました。今度は是非出雲でお会いしたいと思っております。

最後にこの研修を実現させるためにお世話になりました校長先生、出雲高校、島根県、出雲市他の方々、現地でお世話になったアメリカの方々、全ての皆様に厚く御礼を申し上げますとともに、これからもご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。